communiCATion_01 2


それは、ちょっと不思議な物語。

 

あの夏の日。

 

「運命」なんて大層なものでもなく、
かといって、「日常」という平凡でもない
少し変わった夏の物語。

 

 

世界は、ほんのすこしの不思議で満ちている。

 

 

 

 

【出会いは唐突に】

………

……

 

 

目を開けると、そこはいつもと変わらない部屋……

ではなかった。

 

なぜか国民的人気鉄道会社の社長さんゲーム盤の上にいた。

 

「えっ?」

 

そして、頭の上でシャカシャカとサイコロが回っていた。

 

「えっ? えっ?」

 

さらには、僕のうしろにビンボーな神様的な何かがいた。
それもキングサイズ。

 

「えぇええええええええええ!?」

 

自動で転がったサイコロの出た目に沿って歩かされた僕は、いかにもマイナスですよーと主張している赤々としたマスに止まった。

どこからかチャリンチャリンとマネーの減る音が聞こえた。

そして、キングなビンボーの神様が、なぜか僕にのしかかろうと襲ってくる。

……なぜだ!?

 

 

「いやいやいやいやいや!??」

動かない僕の体。
いや、さっきまでサイコロ回して動いてよね!?
僕のターン終了ってこと!?

 

というか、ビンボー神さん。
電鉄ゲームにのしかかるなんて要素なかったよね!?

 

 

というか、そもそもここはどこでどうなってるの!?
ヘルプ! とりあえずポーズ画面にして、思考させる時間をプリーズ!!

 

 

そんな僕の考えなんて、知らずにキングなビンボーさんは、その丸々とした体で僕にのしかかり押しつぶそうとする。

 

 

「……うっ……ぐっ……な……んで、こ…んな目に……」

 

 

「ゆ…め…だと、分かって……るの……に」

 

 

そう、これは夢だ。こんなバカげた現実なんてあるわけない。
というか、もしあったとしても認めない。

 

なのに、この重みは夢なのに、妙に生々しい。

 

いや、夢でも生々しい夢はあるのか……。
ならば、…早く覚めてくれ、こんな夢。

 

 

それでも、キングなビンボーさんはその体を僕から反らせようとはせずに、むしろもっと体重をかけてくる。

 

 

そして、触れる肌と肌。

 

 

筋肉質な感じはなく、とても柔らかく、まるで女性の柔肌のような……。
こんな柔らかさなら押しつぶされて死んでも……
じゃなくて、相手ビンボーな神様だ…そんな一生なんて嫌だ…夢だろうけど。

 

 

って、いかんいかん。意識が……。

 

 

「ぼーんぶぃーー!」

 

 

危ないセリフを吐くキングなビンボーさん。
いや、現実でも貧乏だけど夢の中にまでこうも反映させてくるのはどうかと。

 

 

って、そんなこと考えてる場合じゃなくて、息が……切れ……。

 

 

「かっ……はっ……」

 

……そして、僕は意識を失った。

……

………

 

 

 

 

 

 

「はっ!!!」

 

 

天井が見える。
覚醒した意識は間違いなく現実のもの。

 

 

身体全体に妙な重みがある。
これは一体?

 

 

「……にゅー……にゃー……すぴー……」
僕の声とは違う可愛らしい音が聞こえる。
主に腹部で。
ちなみに朝起きてみたら、腹部から可愛らしい音が鳴るなんて経験はない。
僕のお腹は健康そのものだ。腹の音も、こうは可愛く鳴きはしない。
……というか先ほどの重さを感じる部分で音が鳴ってる。

 

 

ゆっくりと天井から重さの正体となる僕の腹部に目をやる。

 

 

その目に飛び込んできたのは、とても刺激的なものだった。

 

ちんまりとした少女、俗に言う幼女的な体型の女の子が。

 

 

寝ていた。

 

「…えっ?」

 

それも、僕の体に抱きつくように覆いかぶさっている形で。

 

「……えっ? えっ?」

 

……さらには裸体で。

 

「えぇええええええええええ!?」

 

僕は声をあげ、

あまりの情報量の多さに脳は処理を仕切れず
「コイツはお手上げだぜ旦那、数十年あんたと共に生活をしてきたがこんな展開なんてはじめてでさぁ……あっしも、何をするのが正しいのか分かりやせん……とりあえず、こっちの方はフリーズさせていただくことにしやしょう。 では、また起きた時に……」
と言葉を残し僕(本体)を残して脳をフリーズさせた。いや、僕の身体の一部よ、それで、いい……のか……。

 

あまりの刺激の強さに再び布団に倒れ気絶した。

「これは夢だ……」と残し。

………

……

 

 

 

 

「……ん、ぉ……いっ」

 

「……はっ!」

 

……

 

「……はー……、はー……」

 

 

ガバッと布団から起き、肩で息をするように呼吸を整える。

 

 

「……ふぅ」

 

よかった、今度は体に重みなんかなかった。

 

身体は謎の重みなど感じずにスムーズに起きることができた。

 

もちろん、ビンボー神やら、謎の幼女にのしかかられるようなことなどなく。

 

……なんで、あんな夢なんかを。

 

最初のキングなビンボーの夢には飽き足らず、あんな年端もいかないちっちゃな女の子の裸体の夢を見るなんて……なんて……。

 

欲求不満なのかな……僕。

 

時刻は、まだ目覚まし時計が鳴っていないので早朝であろう。

 

あんな夢を見たあとに再び眠るという気がなくなったので、このまま起きることにする。

 

そう思い、身体にかかったタオルケットを払いのけ、洗面所へと向かう。

 

ぼーっとして覚醒しきってない頭のまま、狭いアパートの部屋を抜け

 

 

洗面所で顔を洗う。

 

「あ~……、きもち~……」

 

「よし、切り替え切り替え……」

 

洗面所の鏡の前で、頬をたたきやる気注入。
現実でやる人なんて、あんまり見ないけど子供の頃からのクセだったりする。

 

 

「……頑張らなきゃ……だよな」

 

いつまでも落ち込んでいたり、変な夢に惑わされてたりしてはいけない。

 

さて、居間に戻って布団を畳んで、そして朝飯でも……

 

 

「……?」

と、居間に戻ったところで少し違和感。

 

これは・・・?

 

タオルケット・・・・・・? あれ、昨晩ってタオルケット使ったっけ?
そもそも、このタオルケットって・・・。

 

 

疑問に思いつつ、タオルケットをめくると、そこには。

 

「…………」

 

 

【???】「すぴー・・・・・・」

 

 

・・・・・・・・・幼い子が眠っていた。
歳はいくつだろう。

 

 

「・・・・・・・・・」

そして僕はタオルケットをそっと閉じる。

 

 

「・・・・・・・・・」

何も見なかった。
僕は何も見なかった。

あれは幻覚だ。夢の後遺症だ。そうに決まってる。

もう一度見たら、実は枕だったっていうオチなんだ、きっとそうなんだ。

 

 

「・・・・・・ゴクリ」

もう一度めくる。

 

 

【???】「すぴー・・・・・・すこここここ・・・・・・」

夢で見た(?)幼女がそこにいた。

 

 

 

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ぎゃあああああああああ!!!」

叫んでいた。
見なかったことなんてできるわけないでしょ!幼女ですよ!

 

幼女が僕の部屋で寝てるんですよ! 脳内パニック必然ですよ!

 

 

え、なにこれ、どういうこと、夢? 僕は、まだ夢を見ているのか?
朝、目を覚ましたら、同じ部屋に幼女が眠って・・・・・・、
え? 別に空から降ってきたわけでもなかったよね?
昨晩、変なことした覚えもないし・・・・・・。

 

【謎の少女】「うにゃ……にぃー……ごしゅじん~……朝からうるさい……まだ眠いから……あとにして……」

 

【虎太郎】「あ・・・、ごめん・・・・・・。 じゃあ、またあとでね……おやすみ……」

少女の寝言(?)に思わず、反応してしまう。
ごしゅじん……そういうプレイ? いや、そんなデリでヘルなものを使った経験なぞないし、この子は一体……。

 

【謎の少女?】「・・・すこー・・・・・・」

 

【虎太郎】「……」

 

【謎の少女?】「・・・すぴー・・・・・・」

 

【虎太郎】「…………」

 

【謎の少女?】「・・・・・・・・・ZZZ」

 

【虎太郎】「…………………」

 

【虎太郎】「……………………………………………………」

 

【虎太郎】「って、まてまてまてぇえええええ!!」

 

【謎の少女】「……ふごっ!?……ごしゅじん、うるさい・・・」

 

【虎太郎】「そうじゃなくてだね!」

 

謎の美少女は眠い目をこすりつつ訪ねてきた。

 

【謎の少女】「んー・・・なに? あたし眠いんだけど・・・・・・」

 

【虎太郎】「あの……、えっと、」

 

言葉が出てこない。

 

【虎太郎】「その……なんで……」

 

 

口が渇く。
こういうことを指摘するのには、勇気がいる。
・・・・・・でも、避けることのできないことであることは確かなわけで。

 

【謎の少女】「……」

 

【虎太郎】「だから……つまり……」

 

口籠もる。
小さい子に、なんて言って伝えるべきなのか。
そもそも、どうしてこんな状態になっているのか・・・・・・。
脳へと信号を送るも「それは、旦那の仕事だ。 あっしは信号を送ることしかできない。それでは閉店です、頑張ってください」と相手にならない。僕の脳はどうやらポンコツらしい。知っていたが。

 

【謎の少女】「……」

 

【虎太郎】「……いや……えーっと……」

 

【謎の少女】「……あー! もう、まだるっこしい! ご主人の悪いところにゃ! 言うべきことはスパッと言う!!!」

 

謎の少女は、僕のことを知ってるかのような口振りでズバッと指摘した。

 

【虎太郎】「えっと、それじゃあ……」

 

そう。
謎の少女が、そこまで言ってくれたんだ。
ならば、はっきり言ってあげるのが優しさってものだろう。

 

【虎太郎】「すぅ~……」

 

【虎太郎】「えーと……」

 

【虎太郎】「なんで裸なんでしょうか? 」

 

 

そして、僕は最初の疑問を口にした。

 

【謎の美少女】「に? ……」

 

そして、時は止まる。

 

 

……

………

 

【謎の美少女】「ぎにゃああああああああああああああああああ!!」

 

【虎太郎】「気づいてなかったの!?」

 

【謎の美少女】「なんで、こんな姿になってるの!??」

 

【虎太郎】「それは僕が聞きたいよ!?」

 

【謎の美少女】「ねぇ、ごしゅじん! 教えてよ、どうしてあたしこんなことになってんの!?」

 

【虎太郎】「ご主人って、え? あっ、ちょっ、まって、お願いだから、そんな姿で襲い掛からないで……服着て、服を、お願い・・・・・・」

 

【謎の美少女】「全部、ごしゅじんの仕業だろ! 教えろぉおおおお」

 

【虎太郎】「やめっ、首をしめないで……。 そういうプレイ要求した覚えないから……。 あと、服。 服を着て。 それと、大きな声を出さないで……」

 

 

【謎の美少女】「うるさいうるさいうるさい!! こんな姿になったのだって、全部ごしゅじんのせいに違いない!! ほら、吐くにゃ! 吐け!!」

 

【虎太郎】「首、締まっ・・・・・・息・・・。 なんか違うもの吐きそう……。 タップタップ!」

 

【謎の美少女】「はぁ・・・はぁ・・・。 これは、どういうことなのか、詳しく! 教えて!欲しいですにゃ!!」

 

【虎太郎】「げほっ・・・げほっ・・・。 そんなこと言われても、僕にもサッパリで・・・…そもそも呼んだ覚えもないし、そんなプレイを要求した覚えもないから……」

 

目の前の彼女はヒステリック気味になってるけど僕は何をしたんだろう。
というか、本当に覚えがない。 まず、誰なのだこの子は……。

 

ドタドタドタ………。

 

 

【虎太郎】「げっ!? この足音……」

 

【虎太郎】「ごめん、ちょっとの間でいいから隠れてて」

 

そういって彼女にタオルケットをかぶせた。

 

【謎の少女】「わっ、にゃ!? なにをする! やめっ!!」

 

【虎太郎】「お願いだから、あとでちゃんと話を聞くから・・・・・・少しだけ・・・・・・」

 

ガチャッ!!

 

【???】「こったろーさーん、おかーさんが『朝からうるさいよ! いったい朝っぱらから何してんだい!! 家賃を倍にしてあげようか! それと、夏海を嫁に貰ってちょうだい』 だって」

 

【虎太郎】「あはは……、ごめんごめん。 ちょっと、悪夢にうなされてて。 それに、最後のところは絶対付け足したよね……美知子さんはそんなこと言わないから……。 あと、ノックもなしに鍵をかけてある部屋に入るのはどうかと思うよ……夏海ちゃん……」

 

そう言いながら、タオルケットを脇に寄せる。
ぎりぎりセーフ。 何とか隠せたみたい。
僕の方から見える怪しげな眼光は、ちょっと怖いけど。

 

【夏海と呼ばれた少女】「コタローさんと私の仲じゃないですか! 固い事は気にしない気にしない♪」

 

【虎太郎】「いや、夏海ちゃんとはアパートの大家さんの娘と借りた人の関係でそれ以上もそれ以下もないと思うんだけど……。 というか、なんで、僕の部屋に入ってこれるのさ!? ちゃんとカギかけてたよね!?」

 

【夏海】「ん、これ! てれれてってってー ますたぁ~きぃ~」

 

【虎太郎】「プライバシー問題!!!」

 

安住の地というのはなかった!

 

【夏海】「まぁまぁ、いいじゃない。 だってここは、私とコタローさんの愛の巣なんだから……。 キャッ、言っちゃった……」

 

と言いつつ夏海ちゃんはこちらをちらりちらりと見る。
なんというか古典的というかそういう発言がちらほら見える……のは気のせいだろう。
毎日のこととは言っても、流石に

 

【虎太郎】「げんなり……」

 

とする。

 

 

【夏海】「む、実際に『げんなり』とか言う人初めて見たよ。 そんなに不満か! 夏海ちゃん、これでもJKだぞ! JK!! 羨め! 崇めろ!! 讃えよ!!! そうしたら、恥ずかしいけど特別に匂いをかいであげさせるよ」

 

【夏海】「JKだからこそだよ!? というか、自分のことを大切に!! 夏海ちゃんは、もっと学生らしい振舞いをだね……」

 

【夏海】「ぶぅ~……。 こんな超絶美少女ジョシコーセーを朝から拝めるのだぞ。 もっと感謝してもらいたいものなのに……」

 

【虎太郎】「はいはい、神様仏様夏海様。 今日も朝からお勤めご苦労様です」

 

【夏海】「じとー……。 コタローさん、なんか私のこと適当にあしらってない?」

 

【虎太郎】「やだなー。 ソンナコトナイデスヨ?」

 

うん、全然そんなことない、そんなことない。
「毎日」こういった不毛なやりとりがあってるから、相手に対しておざなりな反応になるわあけじゃないよ。 本当だよ。

 

【夏海】「まぁ、いいや。 でも、悪夢にうなされて朝から叫ぶなんてよっぽどな夢だったんだね。 おかーさん、心配してたよ」

 

【虎太郎】「……あは、ははは…。 そうだね、こんな歳になっても悪夢にうなされるなんてね」

 

悪夢以上に現在進行形で現実で意味不明なことが起きてる最中ですけどね・・・・・・。
後ろから、めっちゃ視線が刺さってるんですけど……。

 

【夏海】「困ったときは、いつでも私を呼んでね♪ 添い寝でもなんでもしてあげるから……、コタローさんが望むなら、それ以上のコトでも・・・・・・いいよ?」

 

【虎太郎】「・・・・・・はいはい、ケッコーケッコー。 そういうのは間に合ってるのでお引き取り下さい。 全くどういったところでそんな言葉を覚えてくるんだ・・・・・・」

 

【夏海】「ぶぅー……。 またそう簡単にあしらって……。 いつかみてろよぉ~」

 

夏海ちゃんが、ジトーとした目で睨んでくる。

 

【虎太郎】「はい、学生は学校があるでしょ、こんなところで油を売らずに準備しなきゃでしょ?」

 

【夏海】「今は夏休みだもーん! まぁ、部活あるからそんなにゆっくりはできないけど。 でも、朝の日課は忘れずにしなきゃ・・・だよね!」

 

【虎太郎】「朝の日課・・・・・・って。 美知子さん泣くよ。 こんな冴えないお兄さんを朝からからかうことを趣味にしてる娘さんがいるって知ったら・・・・・・」

 

【夏海】「はいはい、何事も程々ですよね、わかっておりますよーりょーかいさん……っと。 それで、コタローさん、その丸まったタオルケット?布団?は何?」

 

と、夏海ちゃん。
普段、そういうところは指摘してこないのに・・・・・・何故今日に限って・・・・・・。

 

【虎太郎】「あ、あぁ、これは、今日は天気もいいから干そうと思ってね。 悪夢やこの夏の暑さで汗が結構出たからね」

 

冷や汗たらり。
とっさの言い訳にしては怪しまれないよ……ね?

 

【夏海】「……ふーん。 ……で、何故に丸めてるの?」

 

【虎太郎】「えっ!? それは、その持ち運びやすいからだよ? きっと……」

 

冷や汗だらだらり。

 

【夏海】「ふーん……。 変なの。 ま、いいや。 それじゃあね!」

 

【虎太郎】「いってらっしゃーい」

 

ガチャ

 

バタン

 

【虎太郎】「……ふぅー・・・・・・」

 

【虎太郎】「……もう行ったかな?」

 

【虎太郎】「おーい、もう出てきて大丈夫だよ」

 

と、タオルケットに呼びかける。

 

【謎の少女】「ぶはっ!!」

 

タオルケットから、いきなり顔が飛び出る。

 

【謎の少女】「あつっ! しぬ!」

 

【謎の少女】「こんな暑い真夏の日にタオルケットで丸められるあたしの身にもなってほしいもんだよ」

 

タオルケットに丸まって、まくしたてる謎の少女。

 

【虎太郎】「ごめんごめん。でも、さすがに見られるのはまずいからさ……」

 

【謎の少女】「で、あの子って確か……」

 

【虎太郎】「天森 夏海(あまもり なつみ)ちゃん。 桜ヶ咲学園生で、このアパート・テンシンの大家・美知子さんの娘さんだよ」

 

【謎の少女】「へぇ~、それはそうと、ごしゅじん。 その夏海ちゃんって子と仲好さそうだねぇ」

 

謎の少女はニヤリというか、怪しげな顔をこちらに向けてくる。

 

【虎太郎】「からかわれてるだけだよ……。 活発でいたずら好きだし……」

 

【謎の少女】「ふーん。 へぇ~…。 ほーん……」

 

【虎太郎】「なんだよ……」

 

【謎の少女】「いんや~……、べっつに~……。 そういえば、ごしゅじんを好きになるような物好きはそんなにいないんだったね~って思ってたところ」

 

【虎太郎】「うぐっ……あのねぇ。 確かに、あってるかもしれないけどさ……いきなりそんなズケズケと・・・・・・。 あと、キミとはおそらく初対面なのになんで『ごしゅじん』なんて呼び方されなくちゃならないんだ。 というか、そもそもキミは誰なんだい?」

 

【謎の少女】「えっ……!? ごしゅじん、もしかしてあたしのこと本当に忘れたの?」

 

ガガーンという効果音が彼女の後ろから飛び出てきそうなくらいに驚いていた。
いや、僕にそんな記憶はないぞ。
少女にご主人呼びされるようなそんな特殊な出来事など、僕の脳内データベースを漁っても出てこない。

 

【謎の少女】「いつも可愛がってくれてるじゃない……」

 

と言い謎の少女は、僕に歩を詰める。
いやいやいや。 僕は幼女を可愛がるような趣味とかないぞ。
きっと、おそらく、たぶん。
というか、なんで歩を詰める。

 

【虎太郎】「……えっ、それって、どういうい―――」

 

身体も思考も硬直した僕。
なぜか迫ってくる少女にたじろいでいると―――。

 

バタバタバタ……
ガチャ

 

【夏海】「コッタローさん♪ そういえば『おはよう』の挨拶がまだでした……よ?」

 

最悪なタイミングで第三者が来訪してきました。

 

【虎太郎】「……」

 

一人は、少女に詰め寄られようとしている状態。

 

【謎の少女】「……」

 

一人はタオルケットを巻いているとはいっても、ほぼ裸。
それでいて男に詰め寄っている状態。

 

【夏海】「……」

 

一人は、それをドアを開けた先で目撃し固まっている状態。

 

三者三様の状態で固まっていた。

 

【虎太郎】「あの……夏海ちゃん? さっき言ったよね? 部屋に入る前にはノックをすることって……」

 

【夏海】「………………………………」

 

【夏海】「きゃあああああああああ!! コタローさんが裸の幼女さんに迫られてる!?? これって、あれがそうで、ああいうこと!?? 私という人がいながら、……私という人がいながら!!」

 

【虎太郎】「……なっ!? ご、誤解だよ、夏海ちゃん! あと、なんで最後は二回言ったの!?」

 

【夏海】「そんなこと、私にしかしないと思っていたのに……」

 

【虎太郎】「いや、夏海ちゃんとは、こんなことしたことないよね!?? あと、迫られてるの僕だし!?」

 

【謎の少女】「ほーぅ……、ごしゅじん。 あたしが見ていない間にイロイロやってるのかな?」

 

【虎太郎】「うわぁああ、誤解だぁあああああああああ!!!」

 

【夏海】「うわぁああああん、コタローさんは幼女が好きだったんだぁああ……ロリコンだったんだぁああああ」

 

【虎太郎】「ちょっと、デマはやめて!!?」

 

【夏海】「だから、こんなピチピチギャルギャルなJKにはピクリとも興味を示さないんだぁああああ……」

 

【虎太郎】「あの、ほんと、ちょっと……夏海ちゃん?」

 

【夏海】「どうせ、胸もぺったんこなまな板が好きなんだ、そうなんだぁー……」

 

【虎太郎】「おーい……。 戻ってきてぇ~……」

 

【謎の少女】「おい、ごしゅじん・・・・・・この夏海って子。 ・・・その、なんだ・・・・・・人の言う事を聞かないんだな……」

 

【虎太郎】「うん。 ……まぁ、そうだね。 分かってくれて何よりだよ・・・」

 

【夏海】「コタローさぁあああん……」

 

………

……

……

………

 

 

時間は、先程からたいして経っておらず。
場所は先程と変わらなく我が家……というか、テンリン201号室の居間。
つまり僕の部屋。
ちゃぶ台に僕と対面しているのは夏海ちゃん。
謎の少女は、タオルケットに丸まって部屋の隅に寄って様子をうかがっているような感じ。

 

そんな現場から中継を繋いでお伝えします。

 

【虎太郎】「で、落ち着いた?」

 

【夏海】「・・・・・・うん」

 

【虎太郎】「で、納得した?」

 

【夏海】「ぜんぜん」

 

【虎太郎】「だから、この子は僕の遠い親戚の子で。 夏の間、親が出張で海外に出かけちゃうらしいから一時でいいから預かって欲しいって言われた子で・・・・・・」

 

よくこんな嘘が出てくるな、僕の口よ・・・・・・。
けど、朝起きたら全く知らない全裸の子が僕の上に乗っていたとかいった方が、とんでもないことになりそうなんだよ。

 

【夏海】「夏の間、親が海外出張って・・・・・・なんかアニメみたいな話ですね」

 

【虎太郎】「・・・・・・うっ。 そ、そうだけど。 事実だから仕方ないよ」

 

古典的すぎたか……?

 

【夏海】「ジトーッ・・・・・・。 じゃあ、なんで『コタローさん』のところなんですか」

 

【虎太郎】「うぇっ!?」

 

痛いところを突いてくるな、夏海ちゃん……。
こういう時は無駄に鋭いというかなんというか。

 

【夏海】「言ってはなんですけど、コタローさん、今フリーターじゃないですか。 養うような立場なんですか? 働かなきゃならないんじゃないですか。 就職先見つけなきゃいけないんじゃないですか? しかも、独身だし」

 

【虎太郎】「フ、フリーターだからだよ。 他の親戚よりも時間に都合がつくからって。 あと、この子の生活費は多めに貰ってるんだ。 だから、別に負担にもならないし・・・・・・って、最後の独身ってこの話にいる?」

 

さりげない苛め入ってない? 気のせい?

 

【夏海】「でもでも、こんな可愛い子とコタローさんが一緒にいたら、どんな間違いが起こるか・・・・・・あたしでも欲情しないのなら、コタローさんはロリコンの可能性が・・・・・・」

 

【虎太郎】「ないから! ロリコンじゃないから!! どがつくほどのノーマルだから!!! それに夏海ちゃんは学園生だし、世の中を知らないだけで」

 

【夏海】「それ、いつものテンプレート回答ですよ」

 

【虎太郎】「・・・・・・仕方ないよ。 僕に恋なんて・・・・・・」

 

【夏海】「・・・・・・」

 

【夏海】「分かりましたよ」

 

【虎太郎】「……え、ほんとに?」

 

なぜか分かってもらえた。なぜだ。

 

【夏海】「えぇ、その女の子がコタローさんの家にいる理由は分かりました。 だけど、それなら、なんで連絡してくれないんですか。 同じ屋根の下に住んでいるって言うのに・・・・・・」

 

【虎太郎】「同じ屋根の下っていう言い方は間違ってはいないんだけど。 昨晩、突然この子がきたからさ。 僕は、もっと先の話かと思ってて・・・・・・」

 

【夏海】「なるほどです」

 

【虎太郎】「じゃあ、分かってもらえたところで・・・・・・そろそろ学校へ行った方が・・・・・・」

 

時計をちらちらと見る。
とりあえず少しでも早くこの場から抜け出したい。
ボロが出る前に。 というか夏海ちゃんとの話が終わっても、あそこで丸くなってる謎の少女とも話せなければならないわけで……頭痛くなってくるな。

 

【夏海】「学校の前に、こんなモヤモヤとする出来事があったら部活にも集中できないです」

 

【虎太郎】「そ、そうですか……」

 

【夏海】「今のところまでは、なんとか夏海ちゃんブレインで納得しました。 でも・・・・・・」

 

【虎太郎】「でも……って、まだ何かあるの? 夏海ちゃんって、しつこいとか言われない?」

 

【夏海】「コタローさん!」

 

【虎太郎】「は、はひっ!!」

 

【夏海】「そういうことは女の人に言わないのが礼儀ですよ?」

 

そう言って、夏海ちゃんはニッコリと笑った。
あの表情は……危険信号だ、そう直感した。

 

【虎太郎】「す、すみませんでした」

 

【夏海】「で、その子が来た理由については分かりました。 ですけど、さっきの現状はなんですか!」

 

【虎太郎】「さ、さっきのは……とおっしゃいますと?」

 

【夏海】「ほ、ほら。 さっきの、そこの親戚の女の子と裸で密着していたことです!」

 

【虎太郎】「あっ、あー……、あれね」

 

どういうことって言われても、僕にも展開が早くて何が何だかって感じなのにな……。

 

【夏海】「どうみたって、その……あれはあれじゃないですか! アウトな行為です。 犯罪ですよ、しょっぴかれますよ、お縄ですよ! ポリスメン行きですよ!!」

 

【虎太郎】「わわわっ、誤解だ! あれは、そもそも僕は服を着ていたし」

 

【夏海】「……えっ、じゃあ無理やりその子の服を剥いで……」

 

【虎太郎】「なんで、そういう方向にいっちゃうかなー……。 しかも、どちらかというと、僕の方が首を絞められていたんですけどね……」

 

【夏海】「なんにしても、ちっちゃい女の子を裸にしてあんなことやこんなことをする気だったんでしょ、あの同人誌みたいに!」

 

【虎太郎】「あの同人誌ってなんだよぉ!?」

 

聞こえてない!??
しかも、一人違う方向に話が飛躍してる!!
もしかして、妄想癖強めな子なのかしら……。

 

【夏海】「で、どうなんですか?」

 

【虎太郎】「えっと、あれは、その……」

 

まずい。
何も思い浮かばない。
というか、そもそも女の子に裸で首を絞められるなんて経験あるわけなんかないじゃないか!
どういうシチュエーションになれば、そういうことになるんだよ!
エロゲかよ!!
いや、僕エロゲなんてやったことないですけどね!
貧乏だし……ははっ……って自虐してる場合か!!

 

【虎太郎】「あれはですね……つまり……」

 

やばい、何も思いつかない。

 

【夏海】「……」

 

【虎太郎】「……」

 

万事休すか……
と思ったそのとき、僕の後ろから

 

【謎の少女】「・・・・・・しゃんぷ」

 

謎の少女の声が聞こえた。

 

【虎太郎】&【夏海】「へ?」

 

【謎の少女】「しゃんぷーが切れてたから……」

 

【夏海】「シャンプー?」

 

【虎太郎】「あー、そうそう、そうだったそうだった。 シャンプーが切れてたからだったよな」

 

謎の女の子、ナイスアシスト!
心の中でグッドポーズを出しておいた。

 

【虎太郎】「この子が朝シャワー浴びたくてシャワー浴びるところまでは良かったんだけど、肝心のシャンプーが切れてて、ね」

 

【虎太郎】「で、その子が何も着ずにいきなりバスルームから出てきて僕にシャンプーの替えがないかを聞いてきたわけで、詰め寄られたわけですよ」

 

……で、まぁ、こういう嘘がよく口からペラペラ出るもんですね……いや、普段はこんな嘘使ったことないよ。本当だよ。

 

【夏海】「…………」

 

【虎太郎】「………なんだけど?」

 

【夏海】「………」

 

【虎太郎】「あのー夏海ちゃん?」

 

【夏海】「なーんだ! そういうことだったんですね! もう夏海ちゃん早合点しちゃいましたよ、テヘッ。 てっきり朝からちっさい女の子を家に囲い込んでいたずらしてるんじゃないかと……」

 

【虎太郎】「ぼ、僕にそんな度胸なんてあるわけないじゃないか!」

 

【夏海】「そうですよね。 コタローさん、ヘタレでしたもんね。 忘れてました。 絶対にそんなことありえませんよね」

 

【虎太郎】「ヘタレって……ひどいなぁ夏海ちゃん……事実だけど」

 

【夏海】「なるほど、これで納得できました! ということは、その子はしばらく?」

 

【虎太郎】「うん、まぁ、しばらくはこっちにいるかなー……」

 

【夏海】「へぇー、じゃあ、よろしくですね! ところでお名前は?」

 

【虎太郎】「え!?」

 

そういえば、この子の名前知らない……。

 

【夏海】「だから、名前ですよ、名前!」

 

【虎太郎】「筧 虎太郎」

 

とりあえず、ボケてみた。

 

【夏海】「それは、コタローさんの名前じゃないですか! それくらい分かってます!」

 

【虎太郎】「……」(バチンバチン)

 

謎の少女にアイコンタクトを送り、なんとかしてもらおう

 

【謎の少女】「……?」

 

【虎太郎】「……」(君の名前を夏海ちゃんに!)

 

【謎の少女】「……」

 

……さすがに、アイコンタクトじゃ無理か…。

 

【謎の少女】「……!!」

 

お、伝わった?

 

【謎の少女】「……あ、朝ごはんはご飯でもパンでもいけます」

 

【虎太郎】「話聞いてなかったでしょぉおおお!??」

 

【謎の少女】「お米なら味噌汁。 パンなら牛乳が欲しいです。」

 

【虎太郎】「違うから! 今、朝ごはんの話じゃないから! 名前の話をしてたから」

 

【謎の少女】「……?」

 

いや、首を傾げられても……ね。

 

【夏海】「んー??」

 

ほら、夏海ちゃんもなんか怪しい目で見てるじゃない。
僕から適当に名前を言ってもいいんだけど……この後を考えると…。

 

【謎の少女】「……ユーカ」

 

【虎太郎】「え?」

 

【夏海】「え?」

 

【謎の少女】「私の名前……」

 

 

 

【謎の少女】「ユーカ」

 

 

 

ある夏の出来事。

それは『運命』なんて大層なものでもなく、
かといって、『日常』なんて平凡でもない
少し変わった夏の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

【続く?】


Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。

2 thoughts on “communiCATion_01