communiCATion 02_1

communiCATion 01

 

【前回のあらすじ】

僕は橘 虎太郎(たちばな こたろう)。
おんぼろアパート・テンシンの201号室に住むしがないフリーター。
ある夏の日に、目が覚めたらビックリ。謎の少女が裸(←ココ重要)でのりかかっていたんだ。
そして、なんやかんやあって、アパートの大家さんの娘、夏海ちゃんに疑われるはで朝からバタバタ。
とりあえず、この謎の子って一体なんなのー!

……とこれに書かれているものを読んでみたけど、これ続いてたの?

 

 

 

【問題の整理から】

……

………

 

【謎の少女】「私の名前……」

 

【謎の少女】「ユーカ」

 

【夏海】「そっかー、ユーカちゃんって言うんだ。 わたし天森 夏海。桜ヶ咲学園二年陸上部なんだ。よろしくね」

 

【ユーカ】「あ、こちらこそよろしくお願いします」

 

【夏海】「あと、コタローさんのお世話係なの……」モジモジ

 

【ユーカ】「コタロー……お世話係とは?」

 

【虎太郎】「夏海ちゃんのいつもの意地悪だよ……間に受けないで、あとこっち睨まないで」

 

【夏海】「うぁあ! ほんとに時間がヤバい……」

 

【夏海】「短い間かもしれないけど仲良くしようね、ユーカちゃん」

 

【夏海】「じゃあ、今度こそ、いってきまーす!」

 

 

バタバタして夏海ちゃんは去って行った。
そして、残った二人。

 

【ユーカ】「……なかなかに慌ただしい子だにゃ」

 

【虎太郎】「うん」

 

【ユーカ】「もしかしたら、夏海とは仲良くやれそうかもですにぃ」

 

【虎太郎】「そっか……それは良かった……」

 

 

夏海ちゃんのことよりも、ユーカの喋り方の方が気になった。
というのは無粋なのでよしておこう。

 

 

【虎太郎】「………」

 

【虎太郎】「…………」

 

【虎太郎】「……………?」

 

【虎太郎】「……………!」

 

【虎太郎】「『そっか……それは良かった……』…………じゃなーい!!」

 

【ユーカ】「…?」

 

【虎太郎】「いや、不思議そうにこちらを見ても、こっちが不思議な状態だからね? とりあえず問題は山積みだからね?」

 

【ユーカ】「問題とは何ですか、ごしゅじん」

 

【虎太郎】「それだよ!」

 

【ユーカ】「どれです?」

 

【虎太郎】「その『ごしゅじん』って呼び方、含めて今のこの状況もろもろ」

 

【ユーカ】「……?」

 

【虎太郎】「いや、何言ってんのこの人?みたいな顔されても、こっちが訳わかんない状態だからね!?」

 

【ユーカ】「そうはいっても、ごしゅじんは『ごしゅじん』であるのは変わらない事実にゃんだが……むしろ」

 

【虎太郎】「……むしろ?」

 

【ユーカ】「何故にあたしがこんな姿になってるのかということにゃ!」

 

 

そういってユーカちゃん?は怒ったようにこちらを睨む。

 

 

【虎太郎】「こんな姿って……」

 

忘れてた。
タオルケットにくるまってるものの、この子、裸なのだ。
生まれたての姿なのだ。何も着てないのだ。

 

【虎太郎】「わ、わわわ、と、とりあえず、これ着てください……」

 

そういって、洗濯済の中から無難なスウェットを手渡す。

 

【ユーカ】「えー……なんか、やぼったいにゃ…」

 

【虎太郎】「……」

 

こちらの善意をスルーですかそうですか……。
けっこう人のことを聞かない子だなぁ。

 

【ユーカ】「こっちのがいいにゃ」

 

そういって取り出したのは……

……僕のワイシャツだった。

 

【虎太郎】「ワイ……シャツ……?」

 

【ユーカ】「こっちの方が、そのやぼったいものよりマシだにゃ」

 

【虎太郎】「裸に……ワイシャツ?」

 

【ユーカ】「ごしゅじん、どうかしたか?」

 

【虎太郎】「それは危険だよ。 ……主に僕とって。 裸ワイシャツというのがどういう凶器なのかキミは知らないんだ」

 

何故か早口になった。

 

【ユーカ】「…………お、おう……そうか、わかったにぃ……」

 

【虎太郎】「でも、どうしてもというなら仕方ない……仕方ないんだ」

 

【ユーカ】「どっちなんだにゃ!!」

 

【虎太郎】「ワイシャツでお願いします」

 

そんなわけでワイシャツを着た謎の少女ユーカと対面して座る。
……何だろう、早朝から小さい子とこんなオンボロアパートの一室にいる状況って。
どう考えても犯罪臭しかしないのだが……。

 

【虎太郎】「さて、ユーカちゃんだっけ? おうちの電話番号は分かる? というか自分の家は分かる?」

 

【ユーカ】「……?」

 

【虎太郎】「あれ、伝わってなかったかな、キミのお父さんは? お母さんは?」

 

【ユーカ】「……」ビシッ

 

 

そういって、僕を指さした。
ははは、そうかそうか、僕がお父さんでここがキミの家だったなー……

 

【虎太郎】「って、いやいやいやいや!?」

 

【ユーカ】「お父さんとは少し違う? 飼い主かにゃ?」

 

【虎太郎】「はい?」

 

何やら犯罪の香りがするような幻聴が聞こえた。

 

【ユーカ】「コタローがあたしのごしゅじんであり飼い主。 飼い主だからごしゅじんと呼んでいる」

 

【虎太郎】「………???」

 

 

この子は一体何を言っているんだろうか。
僕が飼い主? え、この子を飼ってるの? 僕が?
いやいやいやいや、まさか、そんなわけ……。
え、現実ですよね、夢?

ほっぺをつねる。いたい。

お父さんお母さんごめんなさい。
フリーターでのらりくらり生活していたあげく、こんな小さい女の子を飼うような男に育ってしまいました。しかも無意識の状態で。

こうなればまだ頭がまだまともな今の状態で……

 

【虎太郎】「警察に自首します……」

 

【ユーカ】「なんでそうなるかにゃ!! はやまるにゃ!!」

 

【虎太郎】「でも、僕はキミを飼ってるわけで、それは問題で、犯罪で、お縄行きなんだ……」

 

【ユーカ】「なんか微妙に夏海の口調が混ざってないかにゃ?」

 

無意識?
もしかしたらここは昨日までいた僕の世界とは別の世界で、なんやかんやあって僕(ここではαとする)は別の世界(並行世界)に移動してしまい、その世界の僕(ここではβとする)は、こんな悪行をしていたということなのか。
小さい女の子を飼っては、『ごしゅじん』呼びに、語尾に「にゃ」とかつける程のあざとさ。何を考えているんだろう、並行世界の僕(β)は……。

……ないない。

だって、リアルですよ、これ。

異世界転生なんてものとは違うんですよ?

 

【ユーカ】「おーい……聞いてるかにゃ」

 

【虎太郎】「あ、ごめん。 少し考え事してた」

 

【ユーカ】「ごしゅじんのことだから、どうせ『もしや別の世界に飛ばされたのか』とか思ってるんでしょ……最近、そういうもの読んでるし」

 

この子は何なのだ?
超能力者か何かか?

というか、何で僕がそういう転生もの読んでるって知ってるんだよ……。

 

【虎太郎】「コホン……とりあえず、一つずつ話を整理していこう」

 

【ユーカ】「……?」

 

【虎太郎】「服。 そっちの問題はひとまず解決したよね。 で、次はこっちの話になるんだけど、キミは一体……」

 

【ユーカ】「にゃ? ごしゅじんは何を言ってるのか? 全然問題解決してないんにゃが」

 

【虎太郎】「……え?」

 

いや、でも服は渡したし。
ワイシャツじゃ不服だっていうのだろうか……。
……
……不服だろうなぁ。

 

 

【ユーカ】「そもそも、あたしがなんでこんな姿になってるのかということで」

 

【虎太郎】「そもそも、僕はキミが誰で何をしにここにきたのか分かってないんですけど」

 

【ユーカ】「……本当に何も覚えてないのかにゃ?」

 

【虎太郎】「…?」

 

そう記憶喪失の人に訪ねるように言われてもてんで身に覚えがない。
はっ! まさか僕は記憶喪失……!

なわけはないか。夏海ちゃんのことは覚えてるし、他にも昨日までの記憶もちゃんとある。

 

 

【虎太郎】「うん。 だって、この部屋は僕が一人で住んでるだけだし……他に誰も……」

 

【ユーカ】「むきー! ごしゅじん!!」

 

【虎太郎】「あ、はい」

 

【ユーカ】「あたしは今、ひっじょーーーに怒っている。 なぜだが分かる?」

 

【虎太郎】「いや全然全くこれっぽっちも」

 

なぜかとんでもなく腹を立てられた。
とはいったものの、本当に身に覚えがないのは確かで、それこそこの部屋は入居してからずっと一人暮らしだ。

というか、この子表情がコロコロとよく変わる子だなぁ。

 

 

【ユーカ】「自分の胸に手を当てて考えてみるにゃ」

そう言われたので胸に手を当て考えてみる。

【虎太郎】「……」

 

【虎太郎】「……」

 

【虎太郎】「……?」

 

【虎太郎】「すみませんさっぱりわかりません」

 

【ユーカ】「むきゃー! 普通気づくはずでしょ! だから昔から鈍感ってよく呼ばれ……」

 

 

 

ぐぅ~~~~

 

 

 

大きなお腹の音が聞こえた。

 

【ユーカ】「……」

 

【虎太郎】「……」

 

【ユーカ】「……」

 

【虎太郎】「あの……」

 

【ユーカ】「……な、なんにゃ」

 

【虎太郎】「とりあえず朝ご飯食べます?」

 

【ユーカ】「………」コクコク

 

 


……
………

………
……

そんなわけで簡単に朝食を作り、ちゃぶ台にのせる。

 

【ユーカ】「お、おぉおおおお………」

 

【虎太郎】「あり合わせで悪いんだけど……」

 

【ユーカ】「いえいえいえ……これが卵焼き? で、こっちがベーコン? こっちはレタス……」

 

ユーカは目を爛々と輝かせてちゃぶ台の朝食を眺めていた。

 

【虎太郎】「……?」

 

【虎太郎】「あ、そういえばユイに朝飯あげなきゃな」

 

 

そういって、キャットフードをお椀にのせる。
そう。後出しになるが、このアパートテンシンはペット可なのだ。
それで僕は愛猫の『ユイ』を飼っているのだ。
コイツ、展開の見せ方下手だなとか思わないでほしい。だって朝から刺激的な体験が続いてるわけだから、ペットのことだって忘れるに決まってる。これは仕方ない……仕方ないことなんだ。

と誰に謝ってるのか分からないことはおいといて。

昔住んでいたところから引っ越したにせよ、上手くペット可のアパートを見つけるのは苦労した。

ペット…?

ん……なにやらおかしな感覚だが気のせいだと思う。
そうだと思いたい。

 

 

【虎太郎】「あれ、いないな……どこに行ったんだ?」

 

【虎太郎】「ユイーーー」

 

【ユーカ】「呼んだかにゃ?」

 

【虎太郎】「いや、ユーカちゃんを呼んだわけじゃなくて」

 

……おかしい。普段は呼んだらすぐに出てくるのに出てこない。

 

【虎太郎】「………」

 

【ユーカ】「ごしゅじん、朝飯はまだなのかにゃ! いいかげん『待て』はやめてほしいにゃ!」

 

 

その瞬間、何かを悟った。

朝起きると謎の少女が部屋にいた。

その少女は、自分のことを『ごしゅじん』呼びしてくる、飼い主だともいう。
そして、あざとい語尾。

愛猫『ユイ』がいない。
また『ユイ』と呼ぶと反応した。

このことから導かれることは……。

 

 

【虎太郎】「……まさか、ユーカちゃん……キミは……」

 

【ユーカ】「そうにゃ、とんでもなくお腹がすいてるんだにゃ……早く食べようにゃ……」

 

【虎太郎】「いや、そうじゃなくて。 キミのことなんだけど」

 

【ユーカ】「そんなことどうでもいいにゃ! 後回しだにゃ!」

 

【虎太郎】「よくないよ!? 全然よくないよ!? 割とこの場面重要だよ!?」

 

【ユーカ】「ごしゅじん、前々から思ってたけどツッコミが強いな……」

 

【虎太郎】「よく言われるよ……。 話を戻すけど、ユーカちゃん、キミは……」

 

一呼吸置く。

 

【虎太郎】「もしかしたらなんだけど。……いや、天文学的にもありえないだろうって自分も思っているわけで、それこそフィクションの世界に迷い込んでしまったようだと思いたいし……それにこんなこと言って間違ってたら、そりゃあキミはものすごく怒ると思うし、この人頭おかしいんじゃないか?と思うかもしれないんだけど……」

 

【ユーカ】「前置きが長いにゃ……」

 

【虎太郎】「……キミは僕の飼ってる猫の『ユイ』なのかい?」

 

言った。
失礼極まりなく、あと自分で言っててもこれどうなのかなぁと思うようなことだけど。
とにかく僕の貧相な頭ではこの結果にしか結びつかないわけである。

 

【ユーカ】「? 何を今更なこといってるにゃ? あたしはあたしだにゃ」

 

【虎太郎】「それは答えになってないような…」

 

【ユーカ】「というか、ごしゅじん。 まさか今の今まであたしのことを気づかなかったというのか?」

 

【虎太郎】「それは気づかないよ!? さすがに飼ってた猫が人間の姿してるなんて、そんなファンタジーな体験を生まれてこのかたまでしたことないんだし……」

 

【ユーカ】「にゃ? それはごしゅじんがあたしのことを人間に変えたわけではないということか」

 

【虎太郎】「そんな特殊能力も持ってないよ……」

 

【ユーカ】「これは失敬だにゃ、てっきりごしゅじんが人恋しさに、あたしを人の姿に変えてるものだとばかり……」

 

【虎太郎】「さすがにそこまで節操ないと思うんだけど……」

 

普段の僕をどういった目線で見てるんだろうこの子。

 

【ユーカ】「でも、夜な夜な本やテレビで女の人の裸を見て……」

 

【虎太郎】「待って!! そこまでにしてください!!」

 

【ユーカ】「? まぁ、とにかくあたしがユイにゃ!」

 

と胸を張って言った。

 

【虎太郎】「本当に。……本当に、あの『ユイ』なの?」

 

【ユーカ】「疑い深いにゃあ……、それに優柔不断というかスッパリ言わずに、もごもごさせたりするからカエデにも出て行かれるんだにゃ」

 

【虎太郎】「っ!? ちょっとそれは……」

 

【ユーカ】「ごしゅじんのことはだいたい分かってるにゃ。 付き合いも長いわけだし」

 

【虎太郎】「だよね……」

 

僕にとってトラウマチックなことも覚えているんだろうか。
なんか嫌だなぁ……。

 

【虎太郎】「そういえばユイは人間換算にすればいくつなんだっ……ほぐわっ」

 

パンチが飛んできた。
もちろんユイの拳なわけだが。

 

【ユーカ】「人間世界と同じよう猫の世界でも女性の年齢は禁止ワードのひとつだにゃ、詳しく詮索するのはなしにゃ」

 

【虎太郎】「さ、さいですか……」

 

【ユーカ】「まぁ、なぜかこんなちんまい貧相な身体つきになったことに関しては問い詰めたいわけだが……誰の仕業かも分からない状態だししょうがないにゃ……」

 

【虎太郎】「……それでもやっぱり信じられないな……。 アニメかゲームの世界みたいだ……」

 

キツネに化かされるとはよく言うけど、ネコに化かされるとはよく言われるのか?
というか化かされるてるのか?
向こうもなんだかよくわかってない状態だし。

 

【ユーカ】「ごしゅじんのことは飼われてからはだいたいなんでも知ってるぞ」

 

【虎太郎】「……例えば?」

 

【ユーカ】「そうだにゃあ……、あたしの名前の由来は確か『これからも二人ずっと末永く結ばれていくといいね』とカエデと話し合ってユイ(結)って名前を付けたりとか」

 

【虎太郎】「わわわわわー……、わー!」

 

【ユーカ】「橘 虎太郎(たちばな こたろう)。血液型B型。身長187cm、体重74kg。フリーター。独身。オンボロアパートテンシン201号室住み。二年前、彼女と別れてからは……」

 

【虎太郎】「わぁー!」

 

【ユーカ】「どうかにゃ! これでもまだ疑うっていうのかにゃ」

 

【虎太郎】「逆にペットにそこまで個人情報知られてるっていうのに驚いたよ……」

 

【ユーカ】「あたしの記憶力を舐めないことにゃ!」

 

【虎太郎】「記憶力どうこうの話じゃなくて、そこまでのパーソナルデータって会話の中では喋らないと思うんだけどね……」

 

【ユーカ】「ところで、ごしゅじん。 そろそろ朝飯を食べてもいいかにゃ? お腹が減ってしかたないんだにゃあ……」

 

【虎太郎】「あ、そうだね。 じゃあ、とりあえず食べようか」

 

そういって朝飯に向かう。

 

【ユーカ】「ほほぉー、これが白米……とてもキラキラしてるにゃあ」

 

茶碗に盛られたご飯を珍しそうに眺めてる。

 

【虎太郎】「そっか……猫の時はずっとキャットフードだったから、こういうのは初めてなのか」

 

【ユーカ】「いやいや、たまにごしゅじんのを横からつまみ食いをしていたから、初めてではなないけど、こうお茶碗に盛られているのを見ると、ついテンションが上がってにゃ」

 

【虎太郎】「そっか。 じゃあ改めて、いただきます」

 

【ユーカ】「いた、…いただきます?」

 

そうしてユイが最初に口につけたのは味噌汁だった。

 

【ユーカ】「ず、ずぅー……あつっ! あっつ!! ごしゅじん、これとてつもなくあついにゃ!!舌が火傷するにゃ」

 

まさかの猫舌だった。猫だけに。

 

【虎太郎】「そんなに熱くないと思うんだけど……ずずーっ……」

 

【ユーカ】「むっ! それなら冷めるまで、こっちを食べるにゃ」

 

そういって茶碗に顔を近づけて食べ始めた。
ユイのちゃぶ台のまわりがすぐに食べかすが飛び散り汚れ始めた。

 

【ユーカ】「ガツガツガツガツ」

 

【ユーカ】「むしゃむしゃむしゃむしゃ」

 

どんどんユイの周りのが汚れていく。

 

【虎太郎】「ストーップ」

 

【ユーカ】「にゃ?」

 

ご飯粒をたくさんほっぺたにつけたまま不思議そうに僕を見つめる。

 

【虎太郎】「えーと、人間になったばかりだから無理にとは言わないけど、ご飯を食べるときはなるべく顔を近づけないで手に持って食べるようにしたほうが……」

 

【ユーカ】「顔を近づけないで食べるってどうするにゃ?」

 

【虎太郎】「このお箸を使って口に持っていくんだよ」

 

【ユーカ】「お箸……?」

 

【虎太郎】「そう、お箸」

 

【ユーカ】「この二本の棒を使って食べるのかにゃ」

 

そういって両手にお箸を一つずつ握る。

 

【虎太郎】「持ち方がとてつもなく怪しいんだけど。 持ち方はこういう風に持って、こうやって動かす」

 

実践してみた。

 

【ユーカ】「こうやって……、う……にゃ……指が疲れるにゃ。 それにとても持ちにくい……」

 

【虎太郎】「最初だし練習は必要だね」

 

【ユーカ】「うがー! まだるっこしいにゃ! やっぱりさっきのようにガツガツ食べたいにゃ……」

 

【虎太郎】「うーん……」

 

でも、それだとちゃぶ台の周りがとてつもなく汚れるんだよなぁ……。

それに畳にも飛び散ってるし……片付けがなぁ……。

 

【虎太郎】「そうだ。 じゃあ、これで」

 

そういって渡したのはスプーン。

 

【ユーカ】「これは?」

 

【虎太郎】「スプーンっていって、これならこうやって掬って食べるから簡単だと思う」

 

実際に掬ってみる。

 

【ユーカ】「ほうほう……。 にゃるほどにゃるほど」

 

【ユーカ】「ほんとにゃ、これなら簡単だにゃ!」

 

【虎太郎】「良かった。 じゃあ今後はこれで」

 

【ユーカ】「にゃ!」

和やかに朝食は進んでいく。